〜かみ合わせの安定がもたらす健康への波及効果〜
当院では、顎関節症状を伴う患者様も多くご来院いただいております。
◆ 顎関節症とは?
顎関節症は、あごの関節周辺や咀嚼筋に痛みや機能障害を引き起こす疾患です。以下のような症状が特徴です:
- 開閉時の痛みや音(カクカク・ジャリジャリ)
- あごの引っかかりや脱臼感
- 開口障害(口が開かない・閉じられない)
- 咀嚼しづらさ、筋肉の疲労感
日常的なストレスや姿勢の悪さ、食いしばり・歯ぎしり、あごの形態なども関連しており、原因は多岐にわたります。
実は、こうした症状を自覚している方は意外に多く、違和感を感じながらも日常生活の中でやり過ごしているケースも少なくありません。また、痛みや開口障害が強い場合には、歯科医院でマウスピースを作製し、症状の緩和を図る治療を受けている方もおられます。
顎関節症の初発は、思春期の15歳前後に見られることが多く、「片側だけで咀嚼する」「硬いものが咬みにくい」といった訴えがよく聞かれます。また、肩こり、姿勢の悪さ、不眠などの全身的な緊張も関連するといわれています。
◆ 矯正歯科との関係性
矯正治療は「見た目の改善」に注目されがちですが、本質的には咬合(かみ合わせ・歯並び)が安定することによる「機能の回復・向上」を目的としています。
そして、この咬合の安定が、顎関節に与える負担を軽減し、長期的に顎関節症の発症・進行を抑える効果が期待されるのです。
特に、交叉咬合や反対咬合といった咬合異常は、あごの偏位を伴いやすく、関節や咀嚼筋に一方向のストレスをかける原因となります。
たとえば臼歯部の交叉咬合では片側咀嚼が習慣化しやすく、左右非対称の筋肉活動が継続することで顎関節症状を引き起こすことがあります。
さらに、交叉咬合に「顎変形症」が合併している場合には、顎関節症の有症率が高くなることも分かっています。交叉咬合では咀嚼が片側に偏る傾向があり、その負担が関節に蓄積されることと、そもそもの骨格のズレが相まって、関節や筋肉の不調をより引き起こしやすくなります。
◆ 咬合の安定がもたらす全身への好影響
咬合が安定することにより、口腔内だけでなく、全身にも良い影響が波及することが言われています。
- 肩こり・首こりの緩和:筋肉のバランスが整い、頸部・背部の負担が軽減
- 姿勢の改善:咬合と頭位・体幹バランスは密接に関係し、全身のアライメントにも好影響
- 集中力・睡眠の質向上:咬筋の緊張やストレスの軽減が神経系にも作用
咬み合わせは、単に「歯」の問題ではなく、全身の健康を支える土台です。
◆矯正治療が顎関節に及ぼす良い影響:
- 関節のバランス改善:あごの運動軌道が安定し、過度な偏りが解消
- 筋肉の緊張緩和:咀嚼筋や顎周囲筋の使い方が均等化され、慢性的な疲労やコリが軽減
- 歯列接触の干渉解消:運動時の干渉を除去し、スムーズな開閉運動が可能に
◆ 治療を検討するにあたって
矯正治療は、顎関節症の直接的な治療法ではないものの、「症状を悪化させない・改善する環境づくり」という点で非常に有効です。
特に原因が明確な咬合異常に由来する顎関節症においては、根本改善を図る治療として選択されることが多くあります。
ただし、矯正治療中には一時的に咬合が不安定になる時期もあり、顎関節への負荷が増す可能性があります。そのため、専門医の的確な診断と管理のもとで治療を進めることが大切です。
◆ 最後に
矯正治療と顎関節症の関係は密接であり、「咬み合わせの安定」は顎や口腔内の健康だけでなく、全身のコンディションを整えるための大きな鍵となります。
参考文献:J. Jpn. Soc. TMJ 8(1): 194-204. 1996 矯正患者における顎関節症(顎機能異常)に関するアンケート調査 川端真一.他
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